sweet words of love.
こちらは美珠が書く、恋愛小説ブログサイトです

Uniform:12

 体重をかけてきた身体に抵抗をすると、花娃の手の上で、パンッ、と乾いた音がして、手が痛くなった。抵抗していた手が、理人の頬に強く当たってしまったからだった。

「あ……、ご、ごめんなさい」

 宙に浮いていた手を取られて、もう一方の手も一纏めにされて、ベッドに縫いつけられる。片手でそうされているのに、一向に拘束が外れなくて、見上げると、理人の頬に一筋の傷が入っていた。それを見て、抵抗を止めると、理人は花娃を見て一度手を止めた。

「抵抗は終わり?」

「……やだ、離して下さい。こんなの違う」

 理人の身体の下で乱された制服。黒と白のいかにも禁欲的な制服が、今はその意味を失くしていた。

「何が?」

「こんなの、合意じゃないですよ。お願い、離して」

「君が本当に合意で抱かれたこと、あるかな?」

 理人がいつもの笑顔を消してそう言って、花娃の手を外した。拘束が緩んだ手が、少しだけ痛かった。体重をかけていた身体が少しだけ軽くなる。花娃のブラウスの中にある手も離れた。

「いつも、合意です」

「嘘をついて。いつも勉強と恋愛を天秤にかけているくせに」

 理人が上から退いて、花娃を見る。

「だって、勉強しろって言ったの、篠宮さんでしょ!」

「そんな君に惹かれたんだ。いつも努力して、いつも悩みながらも前を見ようとするそれに。なのに、君は、いつも勉強の方にウェイトを置く。どうしてこっちを見ない?」

「見てます!」

「見てないね。もう、いい、わかった」

 青い目が瞬きをして、花娃のリボンタイを胸の上に投げるようにして置いた。

「勉強や研究にかまけて、オールドミスにでもなればいい。野絵留のように」

 その言い方に、普通に腹が立った。聖アンティエに誘ったのは理人。そして学者を目指す自分を見つけ出せたのは、理人のおかげでもあると思う。なのに、勉強をして努力すると決めたのに、理人は花娃が好きだと言ってきて。惹かれているし、ちゃんと合意で抱かれている。

 好きでなければ、抱かれないのに。

「ムカつく! 篠宮理人!」

 枕を投げつけると、その横顔に当たった。枕を受け止める理人をみて、もう一つの枕を手にとって、そのまま理人の身体を叩く。

「ちょっと、待って! 待って花娃さん、ストップ! 痛い、目、コンタクト!」

「え?」

 理人が左目を押さえて顔を顰める。目を横に引きのばして、瞬きをして手の上に小さいレンズが落ちてきた。何度も瞬きをするそれを見ると、本当に痛いのだと分かる。

「乱暴者」

「……どっちが? 篠宮さんだって、私の事ベッドに落とした!」

「平手で頬を張って、枕投げといて。どこが乱暴者じゃないと言える? こんなことされたの初めてだ」

 花娃を見て、少しだけ怒りの表情を浮かべる理人は、反対の目のコンタクトも外して、近くにあるテーブルに置いた。その上に置いてあった眼鏡を取って、それを身に着けて。花娃を見てから、ため息をつく。

「そんなに僕が嫌い?」

 言われて、すぐに首を振れなかった。理人の目を見て、そんなことないと、言えばいいのに、噛みしめた唇から言葉が出ない。

「嫌いな男に、なんで抱かれるわけ? 昨夜だって、どうして引きとめた? 君は勉強と研究さえあれば、それで満足? ここに至るまでの経緯は僕が作った。そんな対象として、見てなかったよ、最初は。君は、聖アンティエで実績を残して、院の卒業生として活躍するだろう、そう思っていただけだった」

 聖アンティエの実績。上がれば上がるほど、聖アンティエには有利だろう。最初、理人は花娃をそんな目で見ていたのか、と思った。

「まさか本当に努力をして、聖アンティエに入って来るとは思わなくて。それからもずっと努力をし続けて、両親に反対されながらも。そんな人、誰もいなかった。留学も決めて、言葉も文化も違う中でスキップも果たして、夢に一歩ずつ近づく、その努力する姿。何度も言うけど、本当に綺麗だと思う。……惹かれずにはいられない」

 どこが綺麗なのかと思う。何も持ってない、普通の日本人で、顔立ちも目が少しばかり大きいのが特徴なだけ。

 花娃が努力するのは、もう後には引けないから。何でもやってのける理人に嫉妬するけど、それが花娃には魅力的に見える。加えて、素晴らしい容姿。

 こっちだって、惹かれずにはいられない。

 でも、流されたらどうなるのだろう。結婚とか恋愛とか、そういうことをしたら、今までした努力は継続できるのだろうか、と。花娃はそこが不安でならない。こんなに魅力的な人から、何度も好きだと、結婚して欲しいと言われて、全くその気にならない人がいたら教えて欲しい。

「だって……私……」

 涙が出そうになる寸前で、インターホンが鳴った。最初は無視したのだが、何度も鳴るそれに苛立ったのか、吐き捨てるように息を吐いて、寝室から出ていく。そして、遠くから聞こえた、やあ、と言った声で宮前のものだと分かった。

「何の用です?」

 極めて冷静に応えるそれを遠くで聞いて、花娃は服を直した。ブラウスのボタンを止めて、リボンタイを拾ってソファーの近くに置いてあるバッグを手に取った。髪の毛を軽く整えて、一つ息を吐く。

「……怒ってるのか? というか、その傷、どうし……」

 宮前と理人の横をすり抜けて、一歩部屋から出るが、すぐに腕を掴まれて引き戻される。

「や……!」

「逃げないで、花娃さん」

 簡単に理人の腕に閉じ込められて、顔を上げると、宮前が呆れたような顔で笑った。

「何やってんだ? 篠宮君も、田村さんも。痴話喧嘩?」

 宮前の視線を反らして、理人を見上げると、理人は花娃を閉じ込めたまま、違います、と言った。

「この通り、田村さんが強情なので」

「ははっ、確かに。器用じゃないだろうからな、篠宮君と違って」

 声を出して笑ってそう言う宮前の言葉を聞いて、顔が熱くなる。

「その不器用さも可愛いんだろ? 自分が持ってないところに惹かれるのは、しょうがない」

 宮前を見ると、花娃の頭を撫でた。授業中にしたように。

「学生結婚をして、学者として成功する。カッコいい、シナリオだと思うけどね、田村さん。ま、頑張りなさい」

 そう言って、今度は理人を見た。

「君も頑張って、篠宮君」

 そうしてドアを閉められて、花娃は理人から離れようしたけれど、離れられなかった。

 理人を見上げると、ようやく腕の拘束を解いてくれて、花娃は自由になる。強い力とかに、理人が男性であることを感じて、一歩退いた。

「花娃さん、もう一度聞くけど……僕が嫌い? もしそうだったら、はっきり言って」

 そんなわけない。つきとめないで欲しい、と思いながらも、花娃は今度は首を振った。

「怖くないからって言われたって、怖いです。私、両方上手くやれる自信はないし、特に今は目指しているものがあるから。簡単に目指せるものじゃないです。研究とかそういうもので、身を立てる自信は、まだないのに」

「だから、花娃さんだったら出来るって言ってる。君は、考古学者になれるよ」

「なんで言い切るの!?

 理人はいつも花娃が学者になって、身を立てることが出来るといつも言う。その自信はどこから来るのか分からない。

「君は、自分を信じてるでしょ? 絶対になって見せるって。誰が何と言おうと目指すでしょ?」

 だからなんだというのか。理人は花娃を見て笑みを向ける。

「世界中の誰もがあなたには無理と言っても、自分は出来ると信じている。自分自身が出来ないと、思っていたら、目指すものは一つも達成できない。君は、思いの強さが違う。だから、僕は出来ると分かってる」

 顔がクシャリと歪んだのが分かる。涙が流れたのが良く分かる。

「まだ分からないでしょ? どうして篠宮さん、いつもそうなの?」

「だから、信じてるって、言ってるじゃないか。もし信じきれなくなったら、傍で信じてるって言い続けるよ」

 理人が花娃の頬に手を伸ばして、頬に伝う涙を拭って。

 花娃は、理人の肩を叩いた。二度三度叩いて、壁に押し付けてその身体に抱きついて。

「篠宮さん、バカだ。まだ何も出来てないのに」

「それは僕も一緒だと思うけど。……なんか、今日はいろいろ痛いな。こんなこと、初めてだ」

 しかもバカだと言われたと、笑って花娃の身体を引きよせる。

「オールドミスに、なる?」

 耳元でそう言った理人を見て、花娃は言った。

「後悔しますよ。絶対に、します」

「結婚してくれるんだ?」

 口を閉じると、理人は笑った。

「はい、って言ってよ、花娃さん」

 強く身体を引きよせられて、唇を奪われて、理人の背に手を回す。

 恋も、勉強も手に入れて、自分は頑張れるのか、と思いながら。

 

 

 花娃はもう一度ベッドに連れて行かれて、少し抵抗をしたけれど、それも難なく抑えこまれて、制服を剥ぎ取られた。昨夜と同じ、避妊具が入った箱を枕もとに投げて、昨夜よりも早急に、下着も全て剥がされてすぐに裸にされて。花娃が理人の服を脱がせたと言えば、ネクタイだけ。あとは脱がせる手も届かないくらい、花娃の身体は高められた。

「あ……あ……っ」

 胸を触られながら、唇にそこを愛撫されて。そしてその唇が下がって行って、足の付け根にきつくキスをされた。

「まって、しの、みやさん、待って……」

 下を見ると、理人が少しだけ顔を上げた。躊躇いもなく、花娃の足の間に顔を埋めて、そこに感じる柔らかい感触に口を開けて仰け反る。やめて欲しくて、上に身体を逃そうとすると、理人の腕がしっかり花娃の足を掴んだ。苛まれるような、理人からの行為を受けて、声がひっきりなしに漏れる。

 昨日よりも花娃の身体をいいようにされている感が否めない。何より、理人の整った綺麗な顔が、花娃の足の間に埋まっていること自体、心臓が苛まれるような気持ちになる。

「やめて……篠宮、さん……っ」

 お願い、と花娃が言うと、理人は顔を上げた。忙しない息を吐きながら、顔を上げた理人を見ると、その唇を舐めるのが卑猥に見えて、顔を横に向ける。

「花娃さん、結婚してくれるんだよね?」

 ゴムのパッケージを歯で噛み切りながら言ったことに、花娃は頑固にも頷けなくて。理人が花娃の足を開いて、避妊具を着けた自身を圧し当てる。身体が圧されるような感覚とともに、理人が花娃の足の間の隙間を埋めて、閉じていた青い目を開いた。

「昨日より、スムーズに入った。気持ちいい?」

 息を吐いて、そう言った理人の言葉に応えるのは悔しい。

 昨夜よりどこか感じているのを分かって、悔しいことに心が理人に向かっているのを感じて。

「言って、結婚するって」

 そう言って、身体を酷く緩く揺らされて、それがかえって花娃の中の官能を揺さぶる。

「やだ、これ……っ」

「花娃さん、ゆっくり動かすと、ダメだよね? 言ってくれるまでこのままだよ? どうする?」

 一度だけ強く突き上げられて、シーツを掴んだ。

「まだ頑張る? いいよ、君のおかげで耐久性、上がってるし。……半年以上もお預けだったしね」

 理人が笑って、ゆっくりと腰を動かす。そうして、花娃の胸に手を伸ばしてそこに触れて、唇を寄せてそこを食むようにされて。

 堪らない、と思った。

 綺麗な顔をした理人が、花娃の上で感じている。時々、吐息のような声が聞こえて、緩慢に揺らされるからだから伝染する、快感。いつも花娃が積極的に動いたことはなくて、理人が花娃へ施す愛撫を受けるばかり。理人の容姿とそれがどこか似合わない気もするのに、実際にされると心が酷く高まって、苦しくてしょうがない。

「も、だめ……っや。……や、くして」

 根を上げたのは花娃の方。まだ一回目なのに、これだけ高められてどうなるのだろう。理人の事だから、もう一度は花娃の中に自身を埋めて、そして快感を与えるはずだ。なのに、一度目でなし崩しで、あれだけ頑なにしていた自分を否定される。

「だったら言うんだね。結婚します、って」

 ああ、強引だ。そう思いながら、早く動いて欲しくて。耐久性なんて花娃の中では崩れ落ちていた。

「します……っは」

「何を?」

 強く突き上げた時、花娃は一度達してしまった。理人はイってしまった花娃の頬を撫でて、それでも緩く身体を動かすのをやめないから、また高まって行く。

「酷い……っ」

「どっちが? 僕は、待ったよ、花娃」

 は、と息を吐きながらそう言った。そして、言わないとこのままだ、とまた言って。

「す、る……っだから、動いて」

「だから、何を?」

 言わせようとするそれに腹が立って、肩を一度叩くけれど、その手を取られて背に回される。そのまま身体を引き起こされて、余計に花娃の中に埋まった理人が深度を増して進む。

「けっこ、ん、する……だから……っ、動いて……っ!」

 理人の目が花娃と視線を合わせる。早くして欲しいのに、理人は花娃の背を撫でて、笑みを浮かべた。

「すごく、長い道のり……でも、手に入る。君が」

 そうして花娃の要望通りに理人は動いて、花娃の名を呼んだ。それに応えることはできなくて、代わりに理人の身体を引きよせてこれ以上ないくらい密着した。

「好きだよ、花娃さん」

 理人の言葉に、花娃はからだを震えさせて、また達して。

 ベッドにもう一度寝かされて、上から理人が強く腰を揺らした。

 花娃の頭は、理人しか考えられないくらい、一杯になった。抱きしめられるからだの熱さが心地よくて、理人が達したのを見ると、それだけで感じた。

 

 

 最初の予告通り、結婚するというまで抱かれてしまって。というか、一度目であっさり陥落した自分がどこか悔しくて。理人が言う言葉に落とされた気分だった。

 自分が信じていれば世界の誰もが無理だと言っても、やり遂げることが出来る。その言葉が真実かどうかは分からない。けれど、理人のその言葉にいつも引っ張り上げられるのは事実。

 花娃は留学していながらも、自分を信じていなかった。出来ると思いながらもどこか疑っていた。留学もしているのに、自分の夢がかなわなかったらどうしよう、と。ずっと思っていた。

『だから、信じてるって、言ってるじゃないか。もし信じきれなくなったら、傍で信じてるって言い続けるよ』

 ダメだと思った。もう、この手を取るしかないと、この言葉を反芻すると余計に思う。

「何を考えてる?」

 二度、三度と抱かれてだるくてしょうがなくて、花娃は横を向いて脱力していた。理人の足が絡まってきて、長い腕が花娃の身体を抱きしめる。

「別に、何も」

「残念、僕の事って言ってくれたらいいのに」

 考えてましたよ、と心の中で言って顔が少し熱くなる。

「あとは、花娃さんが好きだと言ってくれたらいいな。そして、篠宮、じゃなくて理人って呼んでくれると嬉しいけど」

「……すぐには呼べませんよ」

「でも、結婚するって言った」

 花娃の耳に髪の毛をかけて、頬に手をやってから自分の方へ向ける。

「君も、篠宮になるよ?」

 小さく音を立てて、耳の後ろにキスをされる。

「そ、ですね。もし本当にするなら」

「まだ、そういうことを。嘘は罪だよ、花娃さん」

 瞬きをする青い目。

「どうして篠宮さんの目、青いの?」

 いつもこの目に有無を言えない気がしてならない。

 一番惹かれたのは、きっとこの目だ。

「……遺伝じゃない?」

「そんなこと、分かってます。バカじゃないから」

 顔を反らすと、花娃の身体を強めに抱きしめて。

「花娃さんは、僕の目の色、好きだよね?」

「そんなこと、ないです」

「それは嘘。嘘を重ねると本当に罪になるよ」

「説教は聞きたくないです」

 逃れようとしても強く抱きしめているので逃れられない。

「君が、いつもじっと見るの、僕の目だから。隠しても分かる」

 耳元で微かに笑うそれを聞いて、くすぐったさを感じる。

「黒い髪の毛に、青い目で生まれて、いいことはあまりなかったけど。花娃さんが気に入ってくれるなら、この目で生まれてきてよかったな」

 首筋に唇を感じて、そこに顔を埋められて。

「もう一度していい?」

 理人の抱きしめている手が、下の方へと滑って行くのを感じて。足の辺りに、理人の熱くなる身体も感じた。

「明日は授業ないでしょ?」

 甘くそう言われて、花娃は瞬きをして息を吐いた。

 なんで知ってるんだろう、と思いながら足の間に伸びる大きな手を感じて。

「……ぁ」

 小さく声を出すと、その手はもっと大胆に動いた。

 甘く苛まれる身体。

「好きだ」

 その声に応えたくなったのは自然なこと。

「私も」

 理人の青い目を見て、その目蓋に触れる。

 そうすると、理人が笑みを浮かべて、花娃の隙間を埋めていく。

 これからどうなるのか分からないが、宮前の言った意味が少しだけ分かった気がした。

 愛し合うのは幸福だ、と。

 

 

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