sweet words of love.
こちらは美珠が書く、恋愛小説ブログサイトです

Uniform:9

 英語はできるのかと問われた。出来ないけれど、努力すると答えた。

「あなたはきっと努力できると思うわ、花娃。でも、あなたリヒャルトから逃げたいからそうするの?」

 紅茶を出してもらって、それを飲みながらそう言われて、花娃は声のトーンを落としながら答えた。

「そうではないです。ただ先生が、提案したから」

 そうではない、と言いながらも、実際はそうだと思う。

「確かに提案したけれどね。聖アンティエとカリキュラムも似ていて、交換留学もしている聖カティア大学。考古学を学ぶなら、あそこは最高よ。私も卒業生だから」

 篠宮理人からあることを言われた次の日、相良野絵留から提案されたのは、留学のことだった。たまたまそういう話になったのは、もっと知識を得るためには、と相談したからだった。学校の勉強だけでは足りない気がして、そう言ったら留学の話になったのだ。

「リヒャルトから何か言われたの? 厳しこと? それとも甘い提案?」

 相良にこりと笑った。赤い唇に弧を描いて。まるでわかっていると言うように。

「あなたが駄々をこね出すのは、結局リヒャルトがらみ、ってことが多い気がするわ。まぁ、それは最近だけどね。結婚してほしいとでも言われた? あの子、気に入ったものは手に入れないと気が済まないし、傍に置いておきたいの」

 花娃は唇を閉じた。

「あら、図星? やるわね、リヒャルト。さすがセリンガム家」

 意味がわからないことを言われて、花娃は眉を寄せた。

「何ですかそれ?」

「前に言ったでしょ? リヒャルトの家系は、情熱で出来てるの。欲しいものは手に入れるし、やりたいことは必ずやるの。優秀な頭脳を持つ家系でもあるから、リヒャルトはまんまその典型ね」

 それに、と相良は花娃を見て、にこりと笑った。

「あなたのことは、なんだか本当に気に入っているようだし。本当に、育ってほしいみたいよ? 学者として」

 本当に気に入っていると言うのは、どうだろうか。

 花娃はつい先日、理人の家で、理人に抱かれた。聖アンティエの硬い制服をネクタイを外して、一枚ずつ脱いで、ベルトに手をかけたとき。作り物のような理人の身体の一部は、花娃を前にして感情が高ぶった男になっていた。

 今まで可愛い態度を取ったとは思えない、花娃にどうしてそんな風になるのかと思った。下の下着だけ取られて、スカートをたくし上げたまま、初めて花娃の身体に理人が入った時。

「そうとは思えません。結婚してほしいなんて、私のこと馬鹿にしているとしか思えないし」

 花娃を求めていると言われた。その求めているものは、花娃の身体なのかと思った。

 初めて身体の関係を持った時、正直痛かった。それから少しずつ慣れて、でも彼がそれだけのために花娃と会っているような気がした。会えばいつもやることは同じこと。そして理人だって、例外ではなさそうな気がした。

「言われたの? ふーん、そう。でもリヒャルトは馬鹿にしてないと思うわよ」

「学費のことを心配してくれるのは嬉しいですが、学費の心配がなくなるから結婚だなんて、出来ません。それに、その考え間違ってるし。本当に私が欲しいと思っているのだったら、もっと何かあってもいいと思います」

 理人は前の彼のそれよりも質量が大きくて、痛かった。けれど慣れは怖いもので、痛いけれど、二度目からはそれも薄れて三度目は酷く感じた。理人の作り物のような人形のような顔をみて、それが人間らしくて。花娃の身体で理人の顔が上気して、感じているような声を出すのが、とてもよかった。

「留学すると苦しくなるわよ? もちろん先日話した通り、奨学金は出るわ。けれど向こうでの生活が出来る? きちんと勉強できるの? 先立つものがないと、困るわ」

「前の大学の時から少し貯めているし、しばらくは大丈夫だと思います」

 相良はため息をついて花娃を見る。

「彼が嫌い? もしくは、そういうことをしてほしくないのかしらね?」

「してほしくないのと、話が飛躍しすぎです。私は顔は普通だし、勉強は確かに好きで、成績は良いと思います。でも、そのどこに篠宮さんがそう思うのか、疑問です。欲しいものは手に入れる、なんて……私は人だから、ものではないです。それに、単なる苦学生。結婚とかそういうものをしている暇があったら、勉強をしていないと置いていかれるから」

 相良は頬杖をついて、花娃の話を聞いた。

 相良何を思っているのかよくわからないが、もし相良が留学を押してくれたら、花娃は留学が出来るだろう。そして、理人とは離れることが出来る。結婚をすれば、好きな勉強がずっと出来るだろう、と言った理人。確かにそうだが、無神経にしか思えない。まだ花娃は二十二歳。第一、勉強をしたいと言った娘がそうやって結婚すると言ったら、両親から勘当されるような気がする。

「リヒャルトはどう言うかしらね」

「どう言うも何も、結婚自体間違ってますから。その時の雰囲気で言わないでほしいです、そんなこと」

 花娃が言うと、相良が笑いながら、だから言ったじゃないの、と言った。

「突拍子もないかもしれないけど、それが私やあの子の家系の特徴なの。情熱的で、止まらない。確かに、情熱は危険な時もある。でもね、花娃、彼は真面目な情熱家なの。言うこともやることも、熱くて正論過ぎて嫌になるでしょうね。でも、嘘はつかない」

 相良が鮮やかな唇に笑みを乗せる。

 正論過ぎて頭に来るのは毎度のこと。でも確かに嘘はついていないとは思う。ただ、今回の件は考えていないようにしか思えないのだ。どこがどうして花娃と結婚なんかしたいのか。

「意味がわかりません」

「私も意味がわからないわ。どちらかというと悩むタイプのあなたを、どうしてリヒャルトがって思う。あの子の日本名、理人って、意味知ってる? 花娃」

「……知ってます」

「光あれ、という名前は美しく生まれたあの子に似合っていた。黒い髪の毛に、初めは薄いブルーの目の色をした美しい赤子だったわ。成長とともに目の色が濃いブルーになって、人形のような顔立ちの、姉に似た美しい青年になって。名前と対をなすように、常に前向きで明るくて、興味を持ったものは何でも首を突っ込むような、冒険家にもなった。そんな光ある子が、どうしてあなたのように常に悩みながら歩く子を、って思う時もある。悩みながら成長していくのが、きっとあなたのレールなのだと思うわ。そんなあなたにリヒトの名を持つ子が惹かれたのは、何か意味とかそういうものを超えたものがあるのかもしれない」

 そんなことを熱く語られても、と思いながら、情熱家と言ったそれは嘘ではないのだろう。

「人が躓くのも、苦労するのも、悩むのも、全て神の導きによるものだと思う。人は試されているのだと常に思うわ。だから、きっとリヒャルトもあなたと言う存在を目の前に置かれて、試されているのかもしれない」

「……それこそ意味がわかりません、相良教授。私が篠宮さんの何を試すの?」

「悩みながらも成長したいと願う一人の女性に、惹かれるようになったそれが、よ。人って常に光と闇。一人が明るければ、一人はどこかネガティブな面を持っているもの。光同士でもきっとうまく行くでしょう。でも、光だけじゃ生きていけないものなの」

 言われている意味がよくわからないが、花娃がネガティブとか、闇とか、そう言うものだと認識した。

 確かに理人が光なら、花娃は闇なのかもしれない。

「あなたのことを悪く言っているんじゃないわ、花娃。ただ闇は光から吸収するものが、光は闇から吸収するものがあるのよ。分からなくても、分かる日が来るかもしれない。あなたは優秀だから」

 そうして再度にこりと笑った相良を見て、花娃は俯く。

「いいわよ。留学の件進めましょう。きっとすぐに許可は出るはずよ。田村花娃だから」

 あっさりそう言われて、花娃は顔を上げた。

「しばらくリヒャルトも忙しいみたいだし、話を進めても大丈夫だと思う。何か言われたら私に言って。必要性を説明してあげる。聖カティアには私も講師として行くから、あなたの成長が見れて楽しみだわ」

 そうして立ち上がって、電気ポットのある場所へ行く。

「紅茶をもう一杯いかが?」

 花娃は頷いて、カップを相良に渡した。

 注がれるそれを見ながら、ついこの間まで留学して勉強をするとか、そういうことを考えなかったのに、と思う。なのに今はそれがベストだと思えて、それを努力しようとしていた。

 結婚しようと、理人から言われた時、結婚した理人との生活を想像した。幸せになれるとか、援助をしてもらうからとか、そういうことを考えても、それは無理な話だった。むしろ自分が馬鹿にされているのだけを感じた。本当はそうではないかもしれないが、その時はそう感じたのだ。

 理人から逃げるのか、と言われればそうで、身体の関係まで持ってしまった自分が本当の馬鹿のように思える。そして、確かに彼に惹かれていた自分もいるから、それがどこか悔しくて。

 反芻するのは理人との熱い時間。

 今まで自分がやっていたのは、きっとセックスじゃなかった。

 そう思えるほど、理人とのそれは快かったし、だから悔しい。

 理人が結婚なんて口にしなければ、もっと花娃だって素直に気持ちを受けて、身体だってもっと素直に答えたのに、と考えるから。

 

 

 理人と出会って、すでに一年近く過ぎた。九月に出会って、十月には聖アンティエに行くことを決めた。そして四月に入学して、今はすでに五ヶ月を経過して、季節は夏になっていた。

 留学のことは水面下で進めてもらって一ヶ月。奨学金の申請と、編入試験。それらをパスして、ようやく留学は決まった。アパートを引き払って下宿までさせてもらった市橋夫妻に、それらのことをお祝いしてもらって。

「花娃ちゃん、一人じゃ心配やわ。イギリスなんて、なぁ。気ぃつけんといかんよ」

 英会話のレクチャーは彗にしてもらって、何とか少しは身に着けた。

「そうね。外国は治安が悪いから。一人で歩かないようにしてね」

 彗がそう言って眼鏡を押し上げてから、花娃のグラスにジュースを注いだ。

「ありがとうございます。下宿させてもらった上に、こんなことしてもらうなんて」

「いいのよ。部屋を綺麗にしてもらってるしね。それよりも、篠宮理人。最近になってあなたの留学知った様子だから。彼氏なんでしょ?」

 相良が水面下で進めてくれたので、留学の寸前まで理人は知らずにいた。相良が言うにはプライベートで忙しく、論文を書いたりしているから、と理事の仕事は休んでいたらしい。そして、歴史神学の博士号を取得したらしいことを知って、さすがだと思った。

「二ヶ月は会ってないし、どうでしょう」

「そうね、いろいろと忙しかった様子だし。イタリアとかにも行ってたんでしょう? 忙しいことね、本当に」

 彗のそっけない言い方に苦笑して、一緒に住んでわかったのは、彼女は理人が嫌いだということだった。

「そっけないなぁ、彗さんは。なんで理人が嫌いなん? 良い子え?」

「良い子過ぎだし、頭いいからどこか人を小馬鹿にして見えるのよね。そこらへん、市橋君と一緒だわ」

「理人の話やのに、なんで僕を攻撃しはるんやろうね、この人は。なぁ、花娃ちゃん。思わへん?」

 二人の会話はいつもこうだ。彗は口では恒星を攻撃しながらも、本当は心は寄り添っているらしく、その雰囲気が可愛いのだ。結婚したのが遅かったと言う二人は、花娃にとってはベストカップルに見える。

「理人、何も言わんと進めとるから怒っとるやろうね」

「さぁ、どうでしょうね」

 どうでしょう、と言いながら多分そうかもしれないと思う。けれど、別に構わなかった。

 花娃が欲しいと言われて結婚しようと言われて。昔の花娃だったら何もしなくて済むから、即日に首を縦に振っただろう。結婚して下さい、と言ったかもしれない。

 だが、今の花娃には目標があるから、だからそれは受け入れられない。

 金銭的にはちょっと辛いものがあるけれど、でもやっていけるだろうと思う。何しろ勉強をして良い成績だったら、学費は心配しなくて良いのだから。

「頑張りなさいね」

 彗がそう言うのに、花娃は笑顔で答えて、目の前に置かれたジュースを飲んで、食事を口に運ぶ。

 市橋夫妻の話は楽しくて、とても有意義な日をだったと思う。

 出発は三日後。荷物はもうまとめていて、聖カティアに送っている。相良が出世払いと称して、勝手にそれらの荷物の代金を払ってしまった。花娃が貯めていたお金が半分以上飛ぶような、そんな額だったから本当に感謝をした。人から助けられてしか生きていない花娃だから、この日本に帰ってきたらきちんと恩を返さなければ、と思う。

 きちんと、自分の足で立てるようになってから、いろんな人に。

 もちろん理人にも。

 彼がいなかったら、花娃は全てをあきらめていた。内緒で話を進めたことに、謝らなければならないだろうが、それも当り前のこと。

 ただ、今の状態で彼とは結婚できないけれど。

 何かで忙しい理人とは本当に会えず、たまにメールが来るくらい。

 それが寂しいとか、腹立たしいとか思うのは、恋ではないと思いたい。

 ただ、容姿的にも、その性格的にも惹かれているだけだと、そう思うのが妥当だと思われた。

 

 

 空港で荷物を預けて、少し時間があるな、と思いながら時計を見ていると、後ろから腕を引かれた。

 振り向くと理人がいて、やや呼吸が荒い。聖アンティエの制服を着たまま、急いできたのだろう。来るとは思わなかったし、理人以外の見送りはいない。父と母には見送りを断った。きちんと帰って来ることを約束して。

「篠宮さん、来るとは思いませんでした」

「時間がなくて、君とは会えなかったけど。本当はきちんと会って話したかった。なんで話してくれなかったんだ?」

「なんでなんて、篠宮さんが忙しかったんでしょう?」

 理人に話そうと思わなかったわけではない。そうしようとしたら、理人は留守だったり携帯の電源を切っていたり。花娃も忙しかったから、それはしょうがないことだった。

「君に言ったことも、返事を聞いていない」

 結婚のことだと思った。それしかない。

「しませんよ、結婚なんて。だって、結婚したら学費が払ってもらえるからって、そんなバカなことしません」

「それもあるけど、それだけじゃないんだ」

 理人は腕を引いた。そして人気のないエレベーターの下のスペースに行って、花娃の背をそこへ押しつけて、唇を重ねる。深いそれに花娃は息を漏らして声も漏らした。理人の制服の襟をギュッとつかんで、そうした時に唇が離れる。

「君が欲しいと言った」

「私はものじゃないです。だから、留学するんだから。きちんと私のこと、一人の人間として見てない。それなのに結婚とか、付き合いとか出来ませんよ」

「きちんと見てる」

「嘘をつかないでください」

 花娃は理人の胸を押したけど、理人は離れなかった。顔を傾けてもう一度深いキスをされて、理人の舌を口腔内に感じる。もう出発と言う日なのに、こんなことをしている自分が不思議だった。

「嘘なんかついてない。君がずっと傍にいたらと思っただけ。何が悪い? いきなりすぎたのは分かるけど、君を馬鹿にしたわけじゃない。欲しいんだ、君ごと」

 花娃は理人の言葉に赤面した。不覚にも、と言う感じだった。

 初めて会った時も、普通に会っているときも、クールでどこか淡々としていて、花娃をやりこめる言葉ばかり。そんな理人から君ごと欲しい、と言われた。言われたことがないセリフで、なんだって自分はこの人からこんなことを言われるのか、と思う。

 人形のように、作られたような容姿の理人から。

「私は、自分で考えて生きていきたいんです。そのきっかけをくれたのは篠宮さんだけど、だから余計に思うんです。考えを変えたらいろんな人が私にかかわってくれた。篠宮さんの影響もきっと大きいだろうから、きちんと自分の足で立って目線を変えて、成功して見せるから」

 理人の青い目は綺麗な色だった。その目が瞬きをして花娃を見るたびに、隠していたけれどドキドキしていた。ここまで言われて、惹かれない女なんていない。ただ、花娃が平凡な容姿をしているから、余計にこの人には気が引けるのだ。それだけ、理人は光るある美しい人。綺麗過ぎて、傍にいるとドキドキする。

「会いに行ってもいいよね?」

 理人が言うことに、花娃は無言で頷いた。

「でも、あんまり会いに来ないでください。っていうか、他に誰かがいたら、好きに付き合って下さい」

「どうして? 本当に可愛くないことばかり言うね」

「勉強の邪魔です。それに篠宮さん、カッコイイんだから誰かしら寄ってきますよ。男の人なんだから、そっちの方を見るでしょうし」

 花娃の身体を強く押し付けて、服の上から胸を掴まれた。

「痛い」

 掴まれた胸は少し痛かった。その胸を掴まれたまま、理人は花娃の唇を乱暴に奪う。噛みつかれるような、少し足意味を伴うキスと、最後に走った唇の痛み。唇が切れたのがわかったのは、キスに血の味が混じったからだった。

「そんなこと言うと、ここで犯すよ、花娃。君は僕のこと、本当に何も分かってないよね?」

 その目が怒っているのを見て、花娃は瞬きをする。普段は穏やかな目の色が、いつもより暗く映る。

「初めてなんだ、頭脳にも心にも惹かれるのは。ただ好きだからというわけじゃない。好きなだけだったら、キスとセックスで十分事足りる。でも、君とはもっと知識も深めあいたいし、その考え込む心にだって、もっとフォローを入れたい。短い期間で、これだけ思うのは初めてで、なのに君は離れていく。どうやって縛ればいいわけ?」

 怖かった正体は、この情熱なのか何なのか。

「縛りたいの? だったら余計に嫌」

 花娃は縛られたくないと思った。理人は花娃の胸から手を離して、失言だった、と言った。

「僕に、君を援助させて。未来の著名な考古学者に」

「……そんなこと……」

「聖カティアも英才教育を目的としている学校。カリキュラムはアンティエよりきついし、言葉の壁もある。君を潰されたくないから、させて欲しい。その代り、目標が達成したら、きちんと返して。達成できなくても、返してもらうからそのつもりでいるように。応援しているから、必ず目標を達成すること」

 青い目が目線を下げて、大きな手がポケットからロザリオを取り出す。手を取られて、理人の手の上にあるロザリオの上に重ねられた。

「あと連絡先もきちんと教えること。誓って、花娃」

 強い口調で言われることなんてなかった。どこか優しさというか、ゆっくりとした口調で話していたと思う。なのに、こうやって言われると、誓わざるを得ない気がした。

「誓います」

 それに満足したのか、ようやく少しだけ笑みを見せた理人を見て、花娃はその頬に手を伸ばす。

「ありがとうございます」

 少し背伸びをして、理人の唇に軽くキスをした。理人の目に触れて、その青い目が何度も瞬きをする。

「会いに来てもいいけど、エッチはなしですよ」

「もう抱かせないつもり? 酷いな」

「だから言ってるじゃないですか、好きにしてくださいって」

 理人に惹かれるけれど、理人はきっと放っておかれないから。

「もう行きます。ちゃんと連絡先、言いますね」

 簡単に腕を抜けられたと思いながら、花娃は後ろを振り向かなかった。

 理人の傍にいると、きっとだめになるだろうと思い始めたのは今日が初めて。

 噛みつかれるようなキスも、口の中を愛撫するようなキスも、そのすべてに心臓が煩いほど鳴って堪らない。

 理人の手で身体を触れられた時の感覚とか、その声とか。

 思い出すだけでだめになるのを自覚して。

 花娃は後ろを振り向かなかった。理人の傍を離れると決めたのだから。

 

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