sweet words of love.
こちらは美珠が書く、恋愛小説ブログサイトです

Uniform:8

「イタリアの名家、オルシーニ家を知っているな? 理人」

 オルシーニ家は良く知っていた。敬虔なカトリック信者で、資産家。貴族階級でもあり、現在聖アンティエにその子息が高校留学している。

「知っていますが、なにか?」

 父、篠宮理臣は、理人をわざわざ居間に呼んだ。何の話だ、と思っていると、名家であるオルシーニの話だった。理人とオルシーニに何が関係あるのか、と思いながら、確かに寄付金と称して結構な額の金が振り込まれる。もちろんそれは、丁重に返していた。それを貰ったからと言って、特別扱いはしないからという理由と、経営自体上手く回っている聖アンティエだから、その必要は今のところないからだ。

 ただ、どうしても、と送って来る寄付金は後を絶えなくて、最近は一部だけ貰ってあとは返していた。

「アナベラ・オルシーニ。この人も知っているな?」

 アナベラ・オルシーニは二ヶ月近く前に日本へ来ていた。弟に会いに、父母と一緒に来たのだ。その時に挨拶をしたくらいで、特に面識はないが知っている。ブラウンの髪に、同じ色の瞳。笑うとクシャリとなった顔が可愛い、綺麗な顔立ちをした女性。

「知っています」

「彼女がお前のことをとても気に入ったらしい。どうしても会って話をしたい、と言ってきた。年齢は理人より二歳年下だったと思う。社交界にデビューも果たしたお嬢様で、ファッションモデルを時々しているらしいが。態の良い見合いのようなものだ」

「……お断りしてください。そんな気はありません」

「他人行儀な言い方はよせ、理人。会うだけ会ってくれればいい」

「一度だけ会っただけなのに、会わないといけないなんて。意味がわからない」

 理人は足と手を組んで父に言った。父はため息をついて、肩を落とす。かなり遅くに出来た子供だから、父はすでに老人と言える年齢だ。確かに年を取ったと思う。そうやって肩を落とすと余計に。

「マーティン卿リヒャルト・セリンガムとして見ている部分も多いだろう。タイトルを持っているからな」

「ただの世襲なのに? 社交界にも顔を出さない、オルドリッジ卿はすでに忘れられようとしている。向こうの城も処分して、伯爵という身分だって無きに近い。それに僕は子爵として社交界に顔を出したこともない。そんなものを見られても、どうにもならない。いっそ爵位なんて返上したいくらい」

「おいそれと返上はできないだろう、理人」

「あの国は嫌いだ。封建制度が生きている、貴族主義」

 理人が外を向くと、さらに肩を落とした父は、理人を見て、お願いだ、と言った。

「いい顔を向けるのも、仕事のうちと思ってくれ、理人。確かに、大半は日本の学生を占めているが、それだけでは聖アンティエの目的が果たせないだろう?」

 それは良く分かっているけれど、そんなことをしなければならないのは、どうしてだろうと思う。ただ、留学生を迎えるだけなのに、いい顔をして聖アンティエを宣伝しろと言うのか、と。

 思いながらも、それは必要なことだと分かっていて。日本人が大半を占める日本の学校に、新たな考えを入れるのは必要だとも思う。もし、理人がアナベラ・オルシーニと会えば、名家中の名家であるあの家から、また新たな留学生を紹介してもらえるだろうとは思う。

「好きな人がいるから、応えられないけど。それでもいいなら」

 理人が言うと、父は目を丸くした。そして嬉しそうに笑って、理人を見る。

「なに? その顔」

「いやいや、そんなことを聞いたのは初めてだ。今までそういうことを、言ったことがあったか? 好きな子がいるなんて知らなかったよ、理人。どんな子だ?」

 いきなり父親の顔をして、好奇心を出すような顔をして。理人はそれを見て、少し眉を寄せる。言うのではなかったと思ったけれど、言ってしまったあとでは修正できない。

「聖アンティエ大学院生で考古学科」

「名前は?」

 名前まで言うのか、と思いながら理人は父を見る。

「知ってどうするの?」

「調べるに決まってるじゃないか」

 もちろん! と、強い口調で言って、さっきまで肩を落としていたと言うのに、今はきちんと上がっている。

Ein liebender Elternteil.」(親バカ)

 ため息交じりに言って、足を組みかえると、当たり前だ、と言われた。

「名前まで教えないよ。学科も言ったんだし、調べようと思えば調べられる」

「調べられないだろう? 沢山いるんだし」

「別にいいと思う、調べなくても」

 好きな人だと、そう認識したのはごく最近のこと。

 以前に付き合っていた、というよりも身体の関係だけ持っていたような、国重恵美とは感情のベクトルが違う。

 好きだから恵美とも身体を重ねていたけれど。

「お母さん似で、優しい綺麗な顔立ちなのに、どうしてそう、そっけなく育ったんだかね、お前は」

「顔と性格は関係ないよ。この顔で苦労もしてるんだ。どうせなら、もっと男らしい顔に生まれたかったよ」

 顔が綺麗だから、という理由で得をすることもあるけれど、警戒心なんか抱かせないような、そんな顔。市橋恒星からは、人形のようだと言われて久しい。

 キスをしても、関係は変わらず、好きだと認識したその人は、相変わらず勉強のことばかり話す。そして、いつまでも考えに考え込んで、そして自分から外へ出られないようにしていく。

 意味がわからない、としか言いようがない、その考え。優秀な頭脳を持ったその人は、現在もドツボに嵌まって動けなくなってきている。何がそうさせるのか、と思いながら、考えすぎなのだと思う。もう少し前向きに考えることが出来たのなら、もっと集中していろんなことが出来るだろうに。

 おまけに頑固で、意外と融通が利かない。初めは結婚して何もせずに暮らしたいと言っていて、その考えもしばらく譲らなかった。知識が欲しい癖に、いつも意味がわからないことを言う。

 宇宙物理学で有名な市橋夫妻が聖アンティエに来てくれることになり、優秀な生徒を探していた。だから理人は一人推薦したのだ。考古学科の田村花娃を。成績を見て、そのディベートの様子を見て、経済的援助を申し出てくれたのに、最近になってそれを断ったらしい。親とうまく行っていなくて、経済的な援助を打ち切られたと言うのに、その余裕はなんだ、と思う。

 奨学金だけでは、もちろん勉強が出来るはずもない。特に聖アンティエのカリキュラムは上へ上がるのが難しい。それも、英才教育を、という名目なのだからしょうがないのだ。だから、アルバイトなどしている暇があったら、勉強をしていなくては置いていかれる。そういう風に決めたのは理人と父の理臣、そして姉の杏朱だ。

「考古学で優秀か。野絵留に聞けば分かるかな?」

「だから、どうして知りたいの? 息子の恋愛に干渉したいわけ?」

「二十六年間で初めてそういうことを聞いたから。私の家系も、聖子の家系も、情熱的だからね。ま、見た目通り清廉でいることはないと思っているが。自分の頭にカリキュラムが合わないからって、学校作ってくれとか、そういうところもさすが私の息子だな、と思うよ。敬虔な、とは言い難いかもしれないカトリック教徒の私だから。リアリストな息子の恋路には興味がある」

 確かに離婚歴があって、二回目で杏朱と理人の母と結婚した。だいたい、五十歳を過ぎて理人が生まれたこと自体、情熱的というか、考えなしというか。姉といくつ年が離れているのか、と思う。

「確かに見た目通り、清廉でなくて申し訳ないね、父さん。興味があったら試す性質なんだ」

 それに驚くまでもなく、ただ面白そうに笑う父を見る。

「田村花娃、二十二歳。満足?」

 そう言って立ち上がると、理人、と呼ばれる。まだ何かあるのか、と思いながら父を見ると、父はにこりと笑った。

「彼女とは深い関係か? オルシーニは縁談相手として見てるから、参考までに。もしかして、一人生徒を下宿させてもいいか、と聞いた人と同一人物?」

 ここまで聞いてくる親なんかきっといないのではないかと思う。理人は、言わなかったらずっと聞かれるのを承知していたから、口を開く。

「会えば勉強の話ばかり。会う場所は常に図書館。常に辞書を開いている彼女と、どうやってそういう風になるのか、僕が知りたい」

 さも可笑しいように笑った父に、理人は今度こそ背を向けて自室へ向かおうとした。

「理人! オルシーニとの時間は調整して知らせるからな!」

 それに手を振ってこたえて、居間を出て階段を上る。

 縁談相手として見られているのには、不快だった。貴族階級は面倒な人ばかりで、その特権階級のせいか、どこか偉そうで嫌いだった。

 けれど、理人の立場上、そう見られるのもしょうがないことで、だから余計に不快感が募る。結婚なんて、そんな人としたくはない。自分は自分の好きな人とと思っているから。

 好きだと認識した田村花娃は、論文にもその考え方にも惹かれた。性格的には全く可愛くないのに、キスをすると顔を赤くして、大きな目が濡れたように理人を見る。そのギャップが理人にとって、堪らなく良かった。頑固で言うことを聞かない花娃が、理人とキスをするだけでそうなるのだから。

「今度は勉強の話になんか、付き合ってやらない」

 そうして理人はパソコンの画面を開く。

 大変な仕事と、大変な論文の作成。大変だと思うけれど、これが理人の考えたレールだから。

 大変だとは言っていられなかった。

 ただし、面倒なことは面倒で、オルシーニのことを考えると、ため息しか出なかった。

 

 

 援助を断ったことを聞いたら、花娃は顔をうつむけた。相変わらず教科書や辞書を机の上に並べているのを見て、理人は自分の鞄を隣にある椅子において、目の前に座る。

 援助を断った理由を聞くと、特別扱いは嫌だと言った。確かにそうだろうが、どこか不器用な花娃に勉強とアルバイトを掛け持ち出来るのか、と思った。絶対にできない、そう思ったから市橋夫妻に推薦したのに。

 自分の親ともキチンと話した、と言ったのには感心したが、けれど自ら苦学生になるとは、と思う。せっかく少しでも楽に、と思ったのに、花娃には理人の心は通じない。

「特別扱いをしたかったんだけど」

 理人が言うと花娃は視線をずらした。ペンを握るその手は止まっていて、勉強をするとかそういう意識はどこかに行っている様子だった。だから、試験勉強はと聞いたら、きっと、と答えた。A以下はとりたくないから、と。

A以下を取ったら、許さないよ」

 理人がそう言うと、顔を上げた。A以下を取ったら、奨学金も危うくなってくる。だが何より、何もかも自分でというのならそれくらい当たり前に取ってほしいと思った。特別扱いなんてしてほしくない、というのなら。

「ドクター市橋の好意を断って、僕の好意も断った。ちなみに聞くけど、君は博士号をいったいどれくらいで取るつもり? 博士号は最初のステップだとするなら、まずそのゴールの目標は?」

 多少意地悪な言い方をしたが、花娃が頑固に理人を拒んでいる気がしていたから、思わず言ってしまった。それでも後悔がないのは正直な気持ちだから。

「二年以内に、出来れば」

 出来れば、という言葉に内心ため息をつく。

「アルバイトをしながら? 出来るかな、本当に」

「篠宮さんも、かけ持ちをしていたんじゃないですか? この学校の経営と、勉強を」

 今も進行中でそうしている。けれど、それはある程度助けてくれる姉の存在もあるからだ。後は自分の要領とか、そういうものでカバーしている。

「ここでは相良、だよ、花娃。僕は自分で言うのもなんだが、要領がいい。でも君は違う。すぐに熱くなるし、他のことが見えなくなる。アルバイトと勉強のかけもちが出来るとは思えない」

「出来たらどうするんですか?」

 挑むようにそう言われて、理人は小さくため息をついた。

「やってみたらいい。大変だから」

 自分で言って、納得すること。経営と勉強の両立は意外と大変で。しかもカリキュラム自体が、勉強をおろそかにすると上に行けないのだ。そうしたのは理人でもあるから、泣き言は言えない。

「大変って、思ったことあるんですか?」

「大変だよ。いつも、常に」

「でも、スピードが速いじゃないですか。二つ目ですよ、博士号」

「自分の学校から、未来を担う学者を出すのに、止まっていられないから。僕は単なる模範生。後に続くのは、未来の科学賞や文学賞を担う学生たち。相良理人がこれだけやった。じゃあ自分はもっとやって見せる。そんな学生が出てくることを祈るだけ。大変だけど、止まれない。僕の理想をかなえてくれた父のためにもね」

 干渉をしてくる父だが、そこは素晴らしい手腕を持っている。父がいなかったら理人はここにいないし、聖アンティエ自体、ここに存在しないのだ。だから、理人は周囲に見せる必要がある。いずれ篠宮理人だと分かる日が来るのだし、贔屓されていたとは思われたくはないから。

「君は目指す学問が違っても、そういうところを見せる学生だと思っていた。でも、違う? 君は考古学者になって、それを職業として行くのではなかった?」

「私は、きちんと目指します。要領が悪くても、きちんとゴールします。でも、スピードまで約束はできません」

「君が援助を断るからだ」

 理人は思わず笑った。良かれと思ったことは全て却下なんて、本当に可愛くない。

「だって、そんなことしてもらう謂われはないでしょう? 彼女と言ったって、形だけ。何をするわけでもないでしょう? 相良さんは、ただ私の頭が欲しいだけなんだ。きっとそう。でもどうにもならないこともあるんです。私だって学びたい。今は本当に勉強がしたい。彼氏から援助とか、補助をされても、後から何も返せなかったらどうするの? 私は、そういうのも嫌だし、自分の力で立って見せて、両親も見返したいんです」

 言っていることが上手くまとまっていない。こんなところは論文にも出ていて、少しは直ってきているけれど、まだまだ、という感じだ。それに、形だけ、という言葉に理人は引っかかった。

「とにかく、こんな状態で付き合いなんてできないし。別れると言うほど何かしたわけじゃないけど、今までありがとうございました。感謝してます」

 そう言って、花娃は教科書をまとめる。それを見て、心の中で普通に苛ついた。確かに何もしていないし、手を出したと言ったって、キスだけで。別れると言うほど何かしたわけじゃないだろう。けれど、そんな気は全くないのに、一方的に言われては良い気分じゃない。

「さっさと手を出せばよかった? 君が言っているのはそういうこと?」

 一応、笑みを浮かべて花娃を見る。今まで、そんな風にさせなかったのはどこのどいつだ、と心の中で呟いた。

「君を求めてると言ったじゃないか。なのにそっけない態度を取るのは君だろう?」

「そんなこと、ありません」

 そんなことある癖に。

「よく言う。手を出しても文句は言わないなら、今すぐ出すよ?勉強のこととか、これからのこととか。そういうことばかりしか話さない君を、待つのはよそう」

 椅子ごと後ずさるのを見て、理人は立ち上がった。花娃の傍に行き、その腕をつかむ。

「ここは、図書館です」

「だから?」

 理人と花娃以外に誰もいないのに、問題があるのか。

 花娃の細い首を撫でて、耳の後ろを撫でる。花娃は撫でるのと反対に首をそらして、外を向く。

「ここで、何をするんですか? 図書館です」

 外を向いていた顔を理人に向けてそう言った。だからなんだ、という前に、理人は膝をついて目線を合わせる。髪の毛に手を埋めて、少し顔を傾けてから花娃の唇を奪う。柔らかな感触を何度も味わって、唇を離した。

 花娃の耳元に唇を寄せて、そこにキスをしてから直接声を吹き込む。

「図書館が嫌なら、僕の家に来る?」

 音を立ててキスをもう一度して、花娃と視線を合わせた。瞬きもせずそれを見る花娃の黒い目は、躊躇いながらもトロリとしていた。たかがキス一つで、こうなる花娃が可愛いと思う。

「……はい」

 返事をしたその声はどこか緩慢な様子だった。その答え方にも満足して、理人はテーブル越しに自分の鞄を椅子の上から取った。そうして、花娃の鞄を持って、手を差し伸べる。

 一度理人を見てから、その手の上に一回り以上小さな手が乗せられて、その手を引いた。花娃は立ち上がって、反対の手を理人に差し出す。

「鞄、持ちます」

 自分の鞄を理人から受け取ったのをみて、理人はその手を強く引いた。

 花娃は司書がいるカウンターの前を通り過ぎる時、特に顔を伏せたが、それも可愛いと思った。

 別に知られても構わないし、ほぼ知られているような花娃との関係なのに。

 理人はこれからすることを想像して、花娃の制服を見る。

 何度も想像した花娃の制服の下の身体。

 脱がせたらどうなるのか、この頑固で言うことを聞かない人が、と頭の中で想像した。

 

 

 携帯電話の着信音が聞こえるのを感じて、理人は目を開けた。抱き枕のように、抱き寄せていた身体の背を撫でて、ゆっくりと起き上がる。頭を乗せていた腕を抜き取って、寝入っているのを確認した。

 外は暗くなっていて、壁にかけてある時計を、眼鏡を身に着けて見ると、すでに午後八時になろうとしていた。手に当たって音を立てたのは、避妊具のパッケージ。避妊は全くしたことがないわけではない。一度か二度ほど、避妊をしたことがある。カトリックでは禁止されていること。恵美と付き合っていた時は、彼女は薬を飲んでいた。

 初めて購入して、花娃に気を使う自分がどこか変だと思った。敬虔中の敬虔なカトリック教徒が今の理人を見たら、きっと糾弾するに違いない。

 脱ぎ捨てていた制服を拾って、それを身に着けて、花娃の制服をハンガーに掛ける。物音がしても起きない花娃は、きっと理人との行為に疲れたのだろう。久しぶりの好意と、普段の花娃のギャップに煽られて、三回くらいはしたはずだと思う。

 そうして服を身に着けて靴を履いて、ドアの向こうに行くと、父が立っていた。

 父を見てため息をついて、なんでここにいるのか、と思う。そうして思い出したのは、オルシーニの令嬢との約束の日が今日だったこと。不覚にも忘れていたことを思い出して、理人は父の言葉を待つ。

「病気で行けなかった、ということにしておいた。約束を破るなんて、珍しいこともあるもんだな」

 父は一人掛けのソファーに座って、理人も対面したソファーに座るよう、手で示す。それに首を振って、寝室に続くドアに背を預けた。

「すみませんでした」

「素直に謝るのは結構だよ、理人。でも約束は破ってはいけないだろう。何をしていた?」

 父は理人が誰と帰って来たのかきっと分かっているはずだろう。篠宮家に手伝いとして来ている、香川夫妻の、その妻に聞いたはずだ。

「聞きたいの?」

 ため息をついて腕を組んで。嫌そうにそう言ったのに、父は少し厳しい目でこちらを見る。

「一応ね」

「セックス」

 理人が言うと、まったく、と言って父は呆れた顔を向ける。

「だから聞きたいのか、って言った」

「女の子を連れて帰って来たとかいうから、予感はあったけど。家でするとは思わなかったな」

「他にどこで? 制服着て、ラブホテル?」

「そんなことを言ってるんじゃない。まぁ、いい。篠宮家の人間らしくなってきたな、理人」

 だからなんだ、と思いながら父から視線を外す。

「理人にそんなことをさせる女の子がいて、嬉しいと言ってるんだ。だけど、約束を破ったこととは違う。一度は会ってもらうからな、オルシーニの娘とは」

「わかった」

「今度破ったら、面目も立たない」

「分かったと言ってる。きちんと会うよ。今日はすみませんでした」

 父は頷いて立ち上がって、にこりと笑って理人を見る。

「田村花娃のことを野絵留から聞いたよ。あの野絵留が褒めていた。よっぽど優秀なんだな」

「そうだね」

「一緒にいて、刺激されるか?」

「いろいろと。一緒にいると飽きない」

 そうか、と言って父は部屋を出ていく。ようやく出て言ってくれた、と思いながら理人は寝室の扉を開けた。

 花娃はまだ眠っていて、それを見て笑みを浮かべる。

 柔らかい身体で、可愛い声を出して、理人を楽しませてくれた。何度もしたいと思ったのは、本当に久しぶりだったし、我慢をしていたのだと思った。

「花娃」

 身体を揺さぶると、二重瞼のクルリとした目が理人を見る。小さく息を吐いて、瞬きをして、身体を起こした。

「良いことを思いついた」

 花娃は半分寝ているようなクリアではない表情で理人を見る。

「君が僕の特別になればいいんじゃないかな? そうすれば、勉強だって好きに出来る」

「……なに? 意味がわかりませんけど?」

「結婚しない? 花娃さん」

 は? と言った顔は、完全に目が覚めていた。理人の顔をじっと見て、何を言っているのか、という風に笑う。

「何を言ってるんですか、いきなり」

「君にきちんと勉強をしてほしいから。そうしたら学費の心配も、これからの心配もなくなる」

 もし花娃が理人と結婚したら、篠宮家の人間になるから。だから、何も心配はいらなくなる。そして、自由に勉強だってなんだってできると思う。

「断るなんて、してほしくないからね」

 そう言って花娃にキスをして、その身体を倒す。

 何度もしたのに、もう一度したくなった自分の身体を省みる。

 初めての相手に、こんなに何度も挑むのは初めてで。そんなことをしたことがない理人だから、違う自分を見れたことに感謝した。

 花娃という、優秀な頭脳を持つ存在に。

 

 

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